隠しダイアリー・8「紙切れほどの値打ちすらないという事実」


つまり、俺は画面の中のスンホンに負けたのだ。裏の見えない、実体なきそれに負けたのだ。俺の醜い裏の顔を見て、俺を捨てていったのだ。

あの人の言葉。
「私はそうそう男を乗りかえるほどカンタンな女じゃない」「これでもガードはカタいの」「スンホンは単にファンなだけ、私はあなただけのもの。安心して」「取り巻きは多いけど、心の中で一線引いてるよ」「あなたが私を裏切らないかぎり、あなたを愛してます」「離れていても、心はあなたにあります」「あなたの日記が更新されてないと寂しい」「私があなたを想う切なさを、あなたも感じた事がありますか?」(以上大意)

今のあの人を見ていると、これらの言葉が嘘のように思える。こんな嘘をついてまで俺をつないでおきたかった・・・いや、それはあるまい。でなきゃいろいろな事が「ありえない」。

今回はこれまでとは事情が違う。表面だけ見るとあの人が二枚舌に見える状態なのだ。
俺は恋愛に嘘を持ちこまれるのが嫌だから、いつも以上に言いすぎた。それは俺の責任だが、じゃあ俺にあんな風に言っておきながら、何故こうもあっさり乗りかえられてしまったのだろう。しかも相手は俳優。あの人だけを愛し見つめるものではない。

それとも、あの人は今も現実から逃避しているのだろうか。来年への不安。運が悪いと俺とは付きあう事もかなわなくなる「家業の後継ぎ」。不安なのは知っている。だから話せる時間が必要だ。だが、俺は間に合わなかったのだ。

前に彼女に本音を話す際に「寂しさだけで100回死ねる」と言った。今はあの熱狂ぶりを見るたびに本当に刺されて死ぬかのように感じる。「お前はスンホニじゃない!スンホニの敵は死ね!」という幻聴が聴こえても不思議はなかった。だから、あの人を信じる事が出来なかった。どんな愛の言葉も、あの韓国人の前にシールドされてしまう。

俺が恋をすると、必ず誰かに取られる。何もかもを許してもダメ、一切を許さない姿勢もダメ。さりとてケースバイケースにやりくりしても、あっちを締めりゃこっちが漏れる、こっちを締めりゃあっちが割れる。

つまり、俺にそれほどの値打ちがないという証明だったわけだな。あの人はそうじゃないと言うけれど、その言葉とは裏腹にあの人自身がそれを証明したわけだ。

今もこれを読んでいるのなら、ちゃんとした説明を求めたい。その内容によっては俺も上の発言の彼女への批判めいた事は撤回する。でも、本当に好きだからこそ、二人の間にある種のルールを必要としていたというのが俺の本心である。あの人にとって足かせになるから、そうしなかっただけで。

信じられないのではなく、信じたいからこそ証明を立てて欲しい。信じたいのは何故かといえば、それはもちろん、涙が止まらないほど好きだから、死ぬほど愛しているから。
どうでも良い相手なら、どうなろうと知った事じゃない。


(2005・12・16執筆)