「フロントミッション」のエンディングについて

どうしたってあの結末には納得いかない・・・

ロングリバース島での最終決戦の後、一人、また一人と去っていく「キャニオンクロウ」の隊員達。キースは次の仕事を求めて、JJは今までの報酬を手に親兄弟の待つ故郷へ、ナタリーは父親の身を案じ、サカタは失った父と兄をめぐる事情について考えるために。
他の隊員も去り、残ったのは反調停軍ゲリラのリーダーであるゲンツ、そして主人公ロイドだけ。

ロイドが愛機に火をかけ、カレンの脳を使った戦闘システム「カレンデバイス」を葬るのはいい。やはりそれは必要だった。だがその後もハフマン島でゲリラを続けるロイドとゲンツの元に「キャニオンクロウ」のメンバーが再度集まるのはやはり違うと思う。

ヤン姉弟は紛争の後はもっと自由に生きていくベきだ。弟のイーヒンはニルバーナ機関の素材要員だったわけだが、それももう終わった事だ。
ポールはそもそも神父じゃないか。これ以上戦場にいるベきじゃない。
サカタは代表のいないサカタインダストリィについて考えたり、あるいは父と兄の罪についてもっと掘り下げて考える毎日であろう。
ナタリーは父親と共に軍に身を置いて、紛争の事後処理に悩むというのが筋のように思える。あるいはナタリーが軍事法廷に出廷させられるとか。父親もか。

これより先、ハフマン島の事はゲンツだけの問題である。ロイドは今までの経緯からゲンツと共に戦う事を選んだとして、後のメンバーが知らないところで伝説のゲリラ闘士として生を全うする・・・というのが落とし所としてはちょうどいいんじゃないかと思う。

同じ志の元に集まるというのは燃えの王道ではあるのだが、 ファンタジー物ならともかく近未来紛争をモチーフにしたこの話では違和感がある。戦争に関わる上での事情がそれぞれ違う者たちの寄り合い所帯である傭兵部隊の性質や、話の大筋上の最終的な敵であるサカタインダストリィとニルバーナを打倒した事でひとまず終わりになった物語。もう戦わなくていい人間が多すぎる。ヤンやポールなど、もう戦場に立つ必要のない人間は特に。
それ以上付きあう必要がない人は、あのラストシーンには必要ない。それ以後も戦うのは、元々戦っていたゲンツと、もはや失う物も行くあてもないロイドだけでいい。

まとめよう。要するにこの話の中枢に居て、なおかつ他にやる事のない人間、行くあてもない人間、他の生き方では未来も何もない人間だけが残るのだ。話の中枢にいたメインの面子は、エンディングでそれぞれの理由を胸に去っていった。残ったのは二人だけである。

あのラストで、それまでの何とも言えない空しさを伴った空気が台無しになってしまったのが、「フロントミッション」の結末の残念なところだ。 俺はそう思っている。