奴の名は「チェルノブ」

泉谷しげるデータイースト殴りこみもずいぶんと古いネタになって久しいわけだが、その事が理由なのか、メガドライブ版は設定が変えられて「父の遺した戦闘スーツに身を包み、悪のデスタリアンにさらわれた妹を取りもどせ」というお話にされてしまったな。
まぁ、その代わりと言ってはなんだが、インパクト全開の書き文字*1を用いたオープニングが用意された上、絵も丸々描き直され、ただでさえ怪しいビジュアルにさらに磨きがかかってしまったという面白いシロモノがこのメガドラ版。
エジプトでピラミッドが砂塵をあげてホバーで走っているのを見た時はもうあまりのアレっぷりに笑うしかなかったね。*2

アーケード版は「戦う人間発電所

アーケード版の方はどんな話だったのかというと、まぁみんな知っての通り、ある普通の男が原発事故に巻きこまれ、放射能汚染されて超人になってしまった、という設定で、悪の集団デスタリアンに捕らわれてしまうものの逃走する、というお話。実は「ウルフファング」のシステム面のルーツはこの「チェルノブ」だとか。*3

ゲーム史上に名を残すハードボイルドなラストシーン

最終面、自由の女神の上でラスボス「クィーンデスタリアン」を倒したチェルノブ。だが彼には安住の地などない。走りつづける他ないのだ。
というわけで、エンディングではゲーム画面そのままに、彼は夜の摩天楼をバックに走る。スタッフロールはオープニングでストーリーと共に見せてくれる*4ので、エンドロールは登場キャラのキャストロールになる。
延々とあのテーマ*5が流れ、彼は走りつづける。

ここからが問題。エンディングが終わると、彼は画面右へ走り去る。彼が画面からいなくなった後、それを追うように左からヘリが出現、右へと飛び去ってやはり画面外に消える。そして銃声だけが聞こえて来る。その後、画面にデカデカと「エンド」の文字が表示されてゲームは終わる。彼がどうなったのかを知る者はいない。
見よ、このハードボイルド。人知れず消えていった彼の運命を。チェルノブは死んだのか?悪のデスタリアンを倒した彼に抹殺命令が下るのは何故か?そもそも誰が、何のために?そんな謎を残して、彼の戦いは終わってしまう。

イロモノとして有名な本作だが、実際は相当ハードな内容なのである。

*1:書き文字はデコゲーの定番。テキストの面白さ、アツさもデコのゲームを語る上では外せない。

*2:ミクロマンでも「エジプトの古代遺跡から蘇生したミクロマン」や「ピラミッドの中に秘密基地を持ちジャイアンアクロイヤーを開発するアクロイヤーたち」といったビジュアルはあるが、さすがにピラミッドは移動はしなかったと思う。

*3:左右撃ち分けや踏みつけダメージをはじめ、いろいろな意味で似ているような。

*4:実際には速くて見てられない(笑

*5:メイン曲の「チェルノブ・テーマ」。地味ながらいい曲である。