不安定な世界に自我が揺れる・・・「サイレントヒル」

今更古いゲームの話。世間では賛否両論の第4作「サイレントヒル4/ザ・ルーム」がリリースされているのだが、俺も今更1周目@ノーマルランククリアしたので感想。というか夜中にプレイを続行するのがちとキツくなってきたのでBGV代わりにNHK教育観てます。・・・フラダンス講座だって。

休暇で遊びに来た先で事故に遭い、気がついたら同乗していた娘がいない・・・主人公は愛娘を探して、謎の街「サイレントヒル」を彷徨う・・・というお話。
序盤は単純に視界の悪い中を犬やプテラノドンを掃討しながら進んでみたんだが、別に恐れるでもなく探索と殲滅に徹していたというのが正直なところ。やがてあたりが暗くなり、視界が奪われる。が、目的地を探すのが面倒なだけかなー・・・と。ちょっと戦いにくいかな?

小学校。謎解きに錬金術用語っぽいタームが混じるのがいい感じだ。最近流行ってるけどな錬金術
登場する化け物がなんだか異様な風体で、生理的嫌悪感を感じる。見かけと裏腹に妙に強い腕力。弾薬節約のために鉄パイプで殴る殴る。ある場所で、よくわからないものに出会う。胎児のような体型で2足歩行する黒い影・・・迫ってくるそいつに思わず後ずさりしてしまう。どうやら危害は加えてこないらしいと判明。
濃塩酸で手首の彫刻を溶かし、音の鳴らないピアノを弾いて、次々に仕掛けを解く。時計塔の扉を開いて潜る。その先には・・・何故か時計塔の扉から出た。だまされた気分になる。そして目の前には見覚えのない魔方陣・・・そしてドアを開けて学校の中に戻ると、その内装は錆びた鉄板と血塗れの金網にすり替わっていた!どうやらさっきまでいたのとは違う、異次元かなにかに放り込まれたらしい。

正直、甘く見ていた。そんなに怖くないかと思っていた矢先に、何の予告もなくいきなりわけのわからない状況に追いやられ、何の説明もなし。しかも闇の奥にはわけのわからない怪物の群れ。理不尽で不条理な状況。気持ちが悪い。
確かに怖いだろこれは。例えば、物置やなんかに入って、しばらくして出たら世界が一変してるとか、そういう状況。しかもあたり一面暗闇で、見慣れた道路は金網張り、建物の壁は錆と血にまみれた鉄板。所々にある人型のオブジェ、意味があるのかどうかも分からない数々の物体。そして徘徊する得体の知れぬ異形たち。
解いてみてわかったが、「バイオハザード」のように人間が作ったものによる恐怖ではなくどっちかというとオカルトの類だし、それにしたってあの妙な世界について誰かがちゃんと教えてくれるわけじゃない。漠然と「闇が現実を侵食している」としか語られていないのだ。

悪意あるものが迫ってくるのは、その悪意があるだけに理解は出来る。だからわかってくると、物理的脅威こそあれ存在自体は恐れる必要がないものだ。しかしこの手の、意味が分からないものは違う。理解不能であるが故に不気味さもいや増す。
当初、ゾンビの類でもないモンスターが襲ってくると聞いてたかをくくっていたんだがとんでもない。なまじ得体が知れないだけに生理的に不愉快な存在に見えてくる。人型っぽいかと思えば空を飛んでいたり、表情も読めない外見と人間より遙かに低い身長が不気味だったり、はたまた人間に寄生して操ったり・・・

本作をやりながら、ホラーゲームにおいての怖さに必要なものを考えてみた。
それはゾンビでも暗闇でもなく、プレイヤーの心理的土台を不安定なモノにする何かではなかろうか。
以前「カタルシスには溜め必須」と書いたが、その「溜め」と真逆の唐突さが怖いのだ(まぁ早い段階から得体の知れない化け物の相手はし続けていたわけだし、状況がオカシイという「溜め」はあったけど)

いや、違う。不条理な状況そのものがプレイヤーに「恐怖」を溜めていくのか?確かにどんどん展開はおかしくなって行くし、状況はどこまで行っても最悪で、おまけに理解不能だ。ライトで照らされた視界しかない中を探索していると、だんだん心細くなって行くのだ。味方などいない、どこまでも一人だと強調されているようにも感じられる。

終盤、いくつかのキーアイテムを求めて彷徨うこととなる謎の回廊。その構造や配置、内装などから、中盤の舞台である病院であろうと思われるが(ただし通常の空間でなく例の異次元モード)、部屋のつながりが明らかにおかしい。ついでに言うと敵の主力は寄生生物つき看護婦の群れ。いきなり首締められるのは怖すぎる。物語の種明かしも済んでいるというのに、この拭えない不安感はなんだ?
あまつさえ、忘れた頃に即死トラップまである。

最後の敵を倒しても、結局奴らがなんだったのかはわからなく・・・
バッドエンドだったんだが、あのオチはあまりにもあんまりだわ・・・というか気の毒だな。でも、ボリュームは少し物足りないかな。いや、いつまでもあんな暗い世界を彷徨うのもどうかとは思うが・・・


ところで、本作の企画に携わった人物が後にプロデュースする同系統ジャンルのアクションゲームとして「SIREN」が存在する。こっちも「多くを語らない」スタイルで得体の知れない恐怖と脅威を描いている。武器の使用訓練などしておらず非力な一般人のプレイヤーキャラ、日常的に存在する種類の武器の数々、そしてやっぱり一寸先は真っ暗。あっちは敵が人間だが、生前の記憶をわずかに残した生ける亡者で、生存者に容赦なく襲いかかる。もちろんその行動原理は謎で、彼らはある程度組織的に、まるで生前の村人のように(本作の舞台は山奥の閉鎖的な村である)行動するだけに不気味さが増す。わけのわからない連中に囲まれるという恐ろしさだ。
そしてその背景には、村の中でだけ語り継がれる秘密が横たわっている・・・

両作品はかたやアメリカの田舎町、かたや日本の山奥の村と、舞台などがかなり異なるので、雰囲気も結構違う。が、どことなく共通するものはあるんじゃないかという気はする。描いているのが「現実を浸食する異世界にいきなり放り込まれる」というシチュエーションだということや、その絶望的状況、あるいは先が読めない暗闇のような世界であるとか、そういう部分は受け継がれているのかもしれない。

例え周囲が明るくなっていようと関係なく、理解もできないところに放り込まれて抜け出せないというのであればそれは「暗闇」と言って良い。その意味で、これら一連の作品は間違いなく闇を描くことに成功しているのではなかろうか。



SIREN」で思い出したのでもう一つ。その辺で手に入るような道具を武器(というか鈍器)にするという共通項がある「サイレントヒル」だが、災害時に使う大型ハンマーが武器として登場する。このハンマー、接近打撃武器では高威力を誇るんだが、「SIREN」にも手持ち打撃武器として「ネイルハンマー」が存在している。もちろん高威力で、登場人物の一人である宮田医師の後半のメインウェポンとなる。
個人的には宮田は好きなキャラだったので印象に残っているんだが、「サイレントヒル」でハンマーを使って寄生生物付きの人間を殴っているとどうにも宮田っぽいなぁと思いつつ、片っ端から撲殺する「宮田プレイ」に勤しんでいたのだからこの人はタチが悪いですな。

それと、まるっきり関係ないとも思えないのが「SIREN」の屍人と「サイレントヒル」の寄生された人間の動き。寄ってきて緩慢な動作で刃物を振りかざすとか、首を絞めるというモーションが似ている。これは偶然なのかそれとも「そういう作品の系譜」なのか。全然違う歩き方をする割に似ていたのが印象的。
とりあえず、もっとマシな結末を求めて奔走中。