「ヘラクレスの栄光III〜神々の沈黙〜」(92年・データイースト)

数日間やってました。で、久々に解いたと。

古代ギリシャを舞台に繰り広げられる壮大な冒険ロマン、と書くとありがちに聞こえるだろうけど、こいつは一味も二味も違うので注意。ちなみにこんなお話。

記憶を失った不死身の主人公が、自分の正体を求めて旅に出る。彼は自分と同じ境遇の仲間たちに出会い、世界のあちこちでさまざまな異変に立ち向かう。
そのさなか、彼らは「人類の英雄」とも「最悪の大罪人」とも呼ばれる謎の人物の噂を耳にする。
全ての答えは、夢の中に現れる風景にある・・・そう信じ、神々の思惑に翻弄されながら旅を続ける不死身の若者たち。そしてやがて明かされる、衝撃の真実・・・

ネット上で本作を語る多くのファン同様、俺もネタバレは避けたいので簡単な紹介に留めるが、それには訳がある。何も知らずに終盤まで辿りついた時に受けるインパクトが桁違いだからだ。
上記にある「衝撃の真実」以降、主人公に孤独で壮絶な運命の試練が訪れる。実際俺も初めてやったときは、あまりのことにそこからどうしたらいいか分からず、しばし呆然とし、やがてだんだん不安になっていった。あまりにも怖かったのだ。
そこからの展開はもう何というか、ネタバレしないようにすると上手く紹介できないがとんでもないことになっていく。

自分の正体が分かると同時に、自分がすべきことを知る主人公一行。全てに決着をつけた、その先に待つ結末・・・涙なくしては見れない、壮絶な運命の物語。

ところで、本作はさすがデコのゲームだけあって、登場人物が妙に軽快だ。言動がコミカルで、話も小気味良く進む。最初の仲間であるレイオンは「積極的で無鉄砲なところが、長所であり短所だ」などと自己紹介をする愉快な奴で、旅のことを日記に書いている(プレイ中に読める!)タイトル通り登場するヘラクレスも、狂言回し的な位置にいたり、初登場早々まるで道化のように描写されていたりする。ヒロインというべき仲間・ステイアはレイオンと夫婦漫才の仲、4人目の不死人は謎すぎて妙に浮いている(笑)
他にも太陽の異変で気温が上昇する事件で「いつもの3倍暑い!」とのたまうペルシャ人(3倍ってなんだよ)だの、様々な発明品を作るもすぐに飽きて主人公にくれるダイダロス氏(おかげでいろいろ助かるんだが)だのと随分愉快な連中が登場する。

そんな愉快な仲間たちだから、最終局面で次々に起こる出来事にも元気に前向きに向かっていく・・・その姿が涙を誘うことも、少なくない。登場人物の台詞のノリが軽いだけに、かえって重いのだ。そんな仲間に囲まれた主人公の目線に立つことで、その重みを感じられるはずだ。いや、終盤手前の急転直下にもなればイヤでもそう思わざるを得なくなるのではなかろうか?エンディング前のラストシーンは非常に地味なのだが、その地味さが逆に深みになってさえいる。
機会があれば、是非入手していただきたい。「ファイナルファンタジー」や「ドラゴンクエスト」だけがRPGではないし、名作として知られる「グランディア「MOTHER」すら凌ぐ(断言)ストーリー展開は今も伝説である。

恐らくこれ以上は語るだけ無意味であろう。とにかく一度試していただきたい。反感を買うだろうが、これに比べたら「ファイナルファンタジー」シリーズなどクソである。なんで同じ人がシナリオ担当なのにここまで質が落ちたのかだけが疑問である。