独白
一人で歩いていると、右手が寂しい。二人で歩いていると手を握られていたから。
あの人の乗っているものと同じ車種が、そこら辺中に走っているのを見るたびに泣けてくる。
あの人の煎れた茶を飲みながら、静かに過ごす・・・年老いたら俺はそんなことをしながら生きていきたかった。
あの人の言葉どおり先立たれるのなら、その最期を見届けたかった。俺が先立つのなら、最期はあの人の胸で死にたかった。
そういう約束だったからだ。
これから先出会う誰かを、同じように想うことはなさそうに思える。もちろん未来のことはわからないが。
ただ今は純粋に「ずっと俺の隣を歩いてほしかった」と思うだけだ。