戦えロバート!新作出してくれないレコード会社と!(笑

ロビー・ヴァレンタインことロバート・マルコ・ケンペの孤独な戦いは、きっと今日もどこか(主にオランダ)で続いているに違いない。クィーンを原点に持ち、あくまでもロックにこだわり続ける男の7枚目のアルバムはまだ出ない。どういうことですかね。ロバート氏としてはレコード会社であるユニヴァーサルに「オンドゥルルラギッタンディスカー!!」くらい言いたい心境なのだろうが。
しかし彼も今年で・・・37歳になるのか。*1トシだな(笑

噂の新人、いきなり出現(凄い矛盾ですが)

昔ロックマニアの同僚がいて、そいつがある日俺に持ち込んで聴かせたのが「アイ・ビリーヴ・イン・ユー」だった、というのが俺とロビー・サウンドとの出会いだったわけですが、アルバム購入は結構後だったりする・・・のはともかく、1stアルバム「ロビー・ヴァレンタイン」はもう相当聴きまくった。実際4thが出るまでは一番聴いていたのは1stだったような気がする。
直後にクィーンと比較して似ているところをいくつか見つけたが、それはそれとして「これはこれでいい!」と思った。音の使い方もなかなかアツいし、メタル的なヘヴィさもありつつ親しみやすいポップさも感じたものだ。アルバム冒頭の「ザ・マジック・ブリーズ」の爽快感などはその代表格。聴きやすいのでおすすめ。アルバムは絶版だが、今でもたまに売ってるのを見かけるのは複雑な心境だ。
いろいろいいナンバーはあるが、このアルバムの最大のポイントはクィーンばりのロックオペラ「アイ・ビリーヴ・イン・ユー」。クィーンばりといっても、実際曲調は「ボヘミアン・ラプソディ」とは全然違う。ロマンティックな哀愁が漂う序盤のメロディとコーラスの美しさに惹きつけられ、そのまま怒濤の展開にハマってしまったという次第。ピアノコンチェルトのような趣もあり面白い。クライマックスの劇的な流れには燃えます。何度聴いても「やっぱいい曲だわ・・・」と思う。GoGo!

無限の魔法が君に味方する

日本では、2nd「ザ・マジック・インフィニティ」が同時発売されている。俺もこの2枚を同時に手にしており、年代による違いを実感できなかった。それは未だに変わらないんだが、実際にはこの2つのアルバムには明確な差があるというのもまた事実。どちらかというと、2ndの方がサウンドが重厚な感じがする。逆に言えば1stの方がポップだということでもあり、聴くならやはり1stからの方が入りやすいのではないかと思う。*2
ジャケット写真を見ると「ちょっとさーみんなこれからどっか飲みにいかねぇ?」ってな感じがするわけですが(俺だけ?)前作同様爽快なサウンドで始まる2枚目は、全体にロックアーティストらしいナンバーで固めてある。この表題曲「ザ・マジック・インフィニティ」もかなり聴きまくった。終曲部のカッコ良さは「マジック・ブリーズ」以上。全体にややシブ目だが、ロマンと燃えを内包する王道ドラマティックロックとして楽しめる。燃え。
「リコンシリエーション」の素朴な味わいが結構好きなんだが、深い悲しみを越えようとする歌詞には複雑な気持ちにさせられることもしばしば。時代が時代だからこんな歌を歌うんだな、この人は。それにしてもラヴソングが多いな。気のせいか?
メガマン」ってあんたロックマンじゃないんだから*3というツッコミはともかく、これはまたずいぶんとヘヴィなテーマを明るく歌ってます。アンチ人種差別の歌ですぜ旦那。サビのコーラスには児童合唱まで交えて壮大に描き出す、華麗でヘヴィなポップロックイカしてます。

ヴァレンタイン序曲

1stの最後には「ヴァレンタインズ・オーヴァーチュア パートI」という曲が入っている。「アイ・ビリーヴ・イン・ユー」同様のロックオペラスタイルの曲だが、全体にメランコリックながら明るく希望に満ちた雰囲気が強い。それだけに、こうも明るい未来や希望を恥ずかしげもなく歌い上げる曲が苦手な人にはツライものがあったりしませんか?いや、俺は全然OKなんですけど。
というわけで2ndにはその続編「ヴァレンタインズ・オーヴァーチュア パートII」が登場。これは凄いぞ。ロビーの「自分語り」なんだが、いつものドラマティックロックをさらにスケール強化し、壮大なサウンドを聴かせてくれる。しかも途中にはラップまで交えるという凝りよう。曲も次々に変化していくので、聴いていて面白い。これ一曲に数曲分のネタを盛り込んでいるのではなかろうか?そしてクライマックスでは冒頭のメロディが戻ってくる。これをコーラスで盛り上げていくのだが、これがもう・・・!正直、初めて聴いたときは泣きました。劇的すぎて。まぁ、彼にはこれ以降また泣かされるんですけどね。

ヴァレンタイン・ビームっ!

ジャケットイラストがまたネタ色濃厚な3rdアルバム「ヴァレンタイン」。ピアノの上で両手からフラッシュってのはさすがにある意味ネタでしょ。ライナーの裏表紙でもヤマハのピアノにまたがって冒険心旺盛なロビーですが、3rdでは前作より1stに近い印象の曲や、それまでにないタイプの試みを投入してきてます。
トップはロックオペラスタイルのシアトリカルなナンバー「GOD」。これもかなり聴いたなー・・・。サビのメロディを追うように現れるコーラスが凄く綺麗で、初めて聴いたときに「なんだ今のは!?」と思った。中盤の急展開を経て序盤の展開に戻るわけだが、最後まで綺麗なサウンドでキメてくれる、ドラマティックかつロマンティックな、くどいくらい豪華絢爛な一曲。とにかくあの神々しいバックコーラスを聴け!という名曲。2ndの「ヴァレンタインズ・オーヴァーチュア パートII」に続いてこの曲にも涙腺を直撃されました。いきなりこれかよ。タイトルに恥じない「神の楽曲」である。
「ネヴァー・ビー・ロンリー」は歌詞が局地的にやりすぎだが、基本的には可愛らしい感じのポップス。いいですよ。
「イン・ジ・アームズ・オブ・ロンリネス」の歌詞は、思うところあって一時期好きだった。ただ、今の俺には似合わないと思う。孤独に抱かれて死ぬ運命などもっての他だからだ。今は孤独じゃないしね。
「モ・リ・ネ・ズ・ミ」は「hedgehog(スペル合ってる?)」の日本語訳「ハリネズミ」にインスパイアされたものであるという話。ストリングスをバックにしたワルツである。ロックどころかポップスですらない。しかし「モリネジュミ」と発音するロビーには萌える(笑
「モーニング・ミンストレル」になるとアコースティックギターをメインにした民謡のような雰囲気に。中間の弦楽パートなんかはどっかのロシア舞踊のようだ(笑)こういう曲を持ってくるところも彼の個性。歌詞は・・・うん、時代だからね。
「ジャスト・フォー・ファン」はアメリカンな感じのロック。俺もあのこっぴどい目にあわせてくれやがった女に一度言っておけば良かったと後悔している・・・「ジャスト・フォー・ファン!(こんなもの、ただのお戯れに過ぎねぇよ!)」ってね。
「マ・シェリー」はいいラヴソングだが、彼のラヴソングの中では普通。いや、これ以降の作品にいいのがあるんだわ。しかし終わり方のクドさは凄いな。何でそんなに長々と溜めるんだか(笑
「ドリームズ・ネヴァー・ダイ」がアツいと感じたのは、このときまだ4thがなかったから。少なくとも、3rdは過去2作品を超えていた。だが、次回作はさらに・・・!

誕生、無敵のどデカい新作

4th「ヴァレンタイン−4 ユナイテッド」はこれまでの3作を踏まえた「まとめ」だった気がする。そして、同時に完成型とも言える。冒頭の「ライズ・アンド・シャイン」のコーラスワークの巧みさと美しさには彼の自作品に対する誇りがよく現れているような気がする。また、「ドント・テル・ミー」「ウェルカム・トゥ・ザ・ナインティーズ」など、少々ダークな雰囲気のポップスにも挑んでいて興味深い。
俺はちょうどいろいろなことがあって心中複雑な時期にこれを手にしていたので、いろいろ思ったりなんだりのお供として印象に残っている。
次に登場する一発目「アイ・ビリーヴ・イン・ミュージック」では自慢のコーラスワークやピアノソロを存分に発揮していて、聴いていて痛快。2コーラス目の後の間奏に入るピアノソロがかっこいい。これもかなり気に入っている曲。この系譜はやがてさらなる名曲を生むわけですが、それはまた後ほど。
「クリスマス・イン・ヘヴン」の美しさは彼ならでは。最高のクリスマスソング。
「ブラック&ホワイト・ユナイテッド」はちと驚いた。テンポを上げて盛り上がった後に来るサビがいきなりテンポダウンしているのがユニーク。コーラスの使い方などはいつも通りで、サビメロも印象的。ピアノソロで締めるあたりもお約束。わかりやすい楽しさ満載のイカす曲。
「パワー・アバヴ」の静かに燃え上がるテンションがいい。これもサビメロがキャッチーです。印象で語ると、割とアメリカンな感じではあるがそこはロバート君、音色を豊富に盛り込んで盛り上げてくれます。これも燃える曲だな。
「ウェルカム・トゥ・ザ・ナインティーズ」・・・うん、まぁその、俺も激しく同意。同じテーマでもう一曲書いてみて欲しい気がするが、今のご時世を見てこのコンセプトで書いたら・・・書けないんじゃないだろうか?
「バック・オン・ザ・トラック」は多分「ドリームズ・ネヴァー・ダイ」の流れを継いでいる曲。このタイトルの意味を考えると燃える。テーマは「復活!」といったところか。「俺は帰ってきた、然るべき道に!」と歌い上げるサビに燃えろ!
そしてチャイコフスキーのピアノコンチェルトに影響された「コンチェルト・フォー・ジ・アンコンディショナル・ラヴ」を経て、美しいバラード「アイ・ウィル・カム・スルー」へ。「たとえ世界に背を向けられても、きっとやり遂げてみせる」という彼の意志がそのまま歌詞になったサビは、聴く者を前進させるエネルギーに満ちている。同時に、このアルバムのフィナーレにふさわしい存在感を持っている。最後は冒頭の「ライズ・アンド・シャイン」の別バージョンが堂々と奏でられて終幕。ちょっとしたショウのような趣。

4枚目・・・

4枚目を聴いた後、「これでロビー・ヴァレンタインの音楽のスタイルは完成したのではないか」と思ったことがある。上にも書いたが、実際4thは今までやってきた音楽のやり方を再現・再構築しているような楽曲が多く、「ロビー・ヴァレンタイン総まとめ」的な雰囲気があるように思える。
それはそうと、実はこの4th発売直前、彼は父親を亡くしている。その失意の中から生まれたのが・・・

ブラックコーヒーしかありません

5th「ノー・シュガー・アディッド」は、ロビーの作風が変化を始めたことの証明であると思える。父親を失って暗い気分になっていることが、アルバム全体にも影を落としているのがモロに出ている。いつものクラシカルでスケールの大きいナンバーがなく、旧作の再録と暗めの楽曲で構成された本作だが、やはりそこはロビー。いい味出してる曲もある。気になるのはピアノをあまり使っていないこと。その辺は「らしくない」。で、できあがったものは全アルバム中もっとも晦渋なものになった感がある。
「マイ・オンリー・1」は今のところ、ロビー作のバラードの中では一番気に入っている。ロビー流の泣きフレーズ全開で、もうクサいのなんの。そこがいい。
「コンバット」の悲壮感溢れる雰囲気は、もうなんというか相当キてるロビーの精神状態を反映している気がする。どことなく曲調に苛立ちが見え隠れしている・・・気が。気のせい?
アルバムの最後には隠しトラックとして謎の音が入っている。ピアノの弦を引っ掻いているのではないかとのことだが、何か不吉な響きがある。実は、この音が次作で再び使われるのだが・・・
全体的には、作品解説でも触れられている通り、ロビー・ヴァレンタインのこれからを占うアルバムであると思った。では、その後どうなったのかというと・・・

火星大王、帰還。

6th「ビリーヴィング・イズ・シーイング」は、ピアノの弾き語りで幕を開ける。父親への鎮魂歌「ディア・ダッド」である。そういう曲をきちんとやるあたり、彼らしいというかなんというか。自身のパーソナルな面を作品に反映させるのはロックアーティストにはよくある話だとは思うが。
どうでもいいが、前作から彼は火星にこだわっている気がする。なんかあるのか?というわけで「ディア・ダッド」の次は本作の事実上のオープニング「ヴィーナス・アンド・マーズ」〜「ア・ニュー・トゥモロゥ」。彼の「一発目」にしてはテンポが遅めだが、確かな力強さを持っている感じがあっていい。人にすすめた覚えがあるな、この曲。
「メイク・ウェイ(フォー・ザ・メッセンジャー)」のやけに重い雰囲気は、これまでの作風と似ているようで違う。何かが違うが、はっきりした違いを明言するのは難しいのだが。難しい。以前の彼なら最後に希望を示しているだろうが、4th〜5thあたりからちらほらと「世の中はそんなにおめでたくはないのだ」と言い始めているように思える。思えば4thのころにはもうその兆候はあったのかもしれない。
タイトル曲「ビリーヴィング・イズ・シーイング」のイントロには、前作のラストにあったあの謎の「音」が使われている。ああ、やっぱりあの音には思うところあったんだ・・・。全体に音数の少ない曲だが、ドラマ性はやはりある。しかし、重い。ひたすら重苦しい。
ラスト前の「フィア・オブ・ハイツ」にもそれは言えていて、これまた重苦しい空気が支配している。全体に物々しく、絶望の匂いがする。バックで鳴る金管の響きも重圧感をさらに強調している。シリアスでシビアな空気が強いが、それもまたハードロックの味わい。それはいいが、サビの後ろで吠えているロビーの旧友、ピーター・ストライクス・・・ピーター、必死だな(笑
あと、今回は前作では少なかったピアノをあちこちで使用していて、彼らしいサウンドが前に出ている。ただ、これまでにない種類の楽曲が存在するのは5thからの流れだろう。要するに、彼はさらに次の段階へ行こうとしているのだ。今までになくトリッキーな「ホワット・イン・ザ・ワールド・アイム・ウェイティング・フォー」「トゥルース・ウィル・アウト」、Jazzyでシブ目の「ノット・イン・ア・ミリオン・イヤーズ」などの曲が存在し、その反面で定番バラード「ジ・エターナル・ライト」や必殺のシアトリカルロック「ナウ、フォーエヴァー・アンド・ワン・ディ」がある。こうして、新生ロビー・ヴァレンタインのスタイルはここに成立したわけだが、その次はどうなるのか今から期待している・・・後述。

Vを二つ並べたらWじゃないのかと何となく言ってみる

というわけで合作「ヴァレンタインvsヴァレンシア」で久々に彼の新曲が聴けるわけだが、そこに繰り広げられているのは「正調ロビー・ヴァレンタイン」といった感じの曲。どうやら彼は旧来の路線をもまとめて抱えていくつもりらしい。
イントロから「シティ・ライツ」で飛ばしている。この曲はロビーのアルバムの一発目にありそうなアップテンポのノリのいい曲だが、今まで以上にスケールも大きく派手。コーラスもさらに強烈かつ華麗になっており、聴くと気合が入ります。特に2コーラス目後の間奏は圧巻!異様に盛り上がります。
そういえば、2002年暮れの東京〜仙台行き*4では毎朝この曲で始めていたなぁ。
他にも「クラブ・ボンバスティック」のやけに明るいノリなど、このアルバムでは総じて軽快なフットワークを見せている。まぁ、それも合作、すなわちお祭りだからでしょうかね。

明日はパープルのシェイクで!

さて、先日ヴァレンシアの話で触れたとおり、今彼は新作のリリースを止められている。運が悪いとお蔵入り?まさかでしょ?ということで、次回作はまだおあずけらしい。新バンドの方も今後どこかで聴けるだろうけど、なんでも彼のパートはベースだって話だからなぁ。ベースってガラじゃないだろーロバート・・・
実は、7th「ザ・モスト・ビューティフル・ペイン」の音源の一部は過去にさわりだけ公開されたことがある。一発目は明るいがヘヴィでパワフルなものになっているようだ。現在公開されている情報によれば、収録曲はかなりの数に上る、らしい。果たして、次回作はどうなるのか?6thで確立したスタイルが登場するのか、それとも4th以前の路線が復活するのか。あるいは両方?
ともかく、7thでは彼の真価が問われる。ウルトラザウルスなみに首を長くして待ってみますかね・・・。

*1:1968年12月4日、射手座生まれ。またしても火属性!射手座の人とは妙なところに接点を持つ傾向にあるのよね・・・

*2:これから入るのであれば入手難易度から考えて1、2を飛ばして3rdまたは4thから入る方がいいだろうけど・・・。

*3:海外では「ロックマン」シリーズは「MEGAMAN」という。知っている人も多いかと思われる。

*4:このへんの話については折を見て日記にて「復刻」してみたいと思う。