「仮面ライダー響鬼」所感

いや面白いんだけど、なんとなく不安が。
毎回のんびりしたノリで、普通の少年と戦う大人との交流を描く話ばかりだと、物語に起伏かつけられないのではないかという不安。
ヒビキさんたちはこれからどうするのか。何を相手にどう戦い、今ある世界をどんな風にしたいのか。彼ら「鬼」は戦って切り拓くべき何かを見ているわけではない?
物語の流れの中で、主人公たちが起こす行動によって状況がどう推移していくか、そういうのをやる物語ではないってことか?だとしたら、命を賭けて戦ってるのに事務的すぎて、まるでリーマンのようだ。それを見上げる少年に「形は違うけどその辺の会社員と大差ないな」と思われたりしたらシャレにならんような。
いや、敵が人外だし人間に害を成す妖怪変化の類だし、鍛え抜いた力と技で奴らを退治できる特別な存在、と考えると、そりゃその辺のリーマンと同一視するのはマズイかもしれんが、リーマンだって己を賭けて一生懸命戦ってるのは同じなのよ、実際。働いてる人は職務に誠実である限りすべて平等に「自身を賭けている」。
でも、少年にそれがわかるとは思えないので、少年がヒビキさんたちに一瞬でも上述のような疑念を抱いたりしたら、その温度差で崩壊する話だよな。
多分明日夢たちはそんな疑念は抱かないだろうけど、おそらくは明日夢の目線を媒介としているであろう(明日夢=ただの一般人の目線になっているので)視聴者が疑念を感じたりすると、「なぜヒビキさんにこだわらなければならないのか」の根拠が薄まり、結果として視聴者との間に「目線の温度差」が生じ、物語への没入を妨げる結果になるんじゃないだろうか。

まぁこの考察は魔化魍抜きで考えてるからなんだけど、なんで「魔化魍抜き」の考えに至ったかというと、少なくとも現段階では魔化魍どころか童子や姫すら人里に現れていないから。人里に現れないものであるならば、少なくともただの一般人にとっては直接被害に遭わない限り「自分には関係のない話」になってしまう。
そりゃそうだよな。自分には関係ない世界の出来事で、まして迂闊に関われば巻き込まれて死ぬ(あきらが怒るのも無理はない)んだから、理性的に考えれば関わりたくない相手だ。それでもヒビキさんにこだわる明日夢はどうかと思う。

ちなみに、逆に魔化魍が人里に出現するようになったとしたら・・・ヒビキさんがどうこう言ってる場合じゃなくなるだろうな。
結局、ヒビキさんたちに負けず劣らず明日夢少年も相当な変人ということになってしまう。好奇心と憧れだけで追いかけるにはあまりにも危険な相手とも言えるしね。

危ないから近づくな

ついでなんで、この考察を転用して「鬼」側の視点で考えると、俺だったら迷惑。化け物相手に式神で山狩りを行い、敵の所在を特定して単身強襲なんて恐ろしい仕事の現場に部外者がいると危なっかしい。
というのは、父親がいわゆる特定建築業(ぶっちゃけていうと内装屋)の経営者で、自身も建築現場での作業に従事した経験を持っているからそう思うんだろうな。化け物退治なんかよりは遙かに楽だと思う工事現場仕事だけど、両手に電動工具(マキタあたりの)をぶら下げて、壁や天井に穴を開け、部材を切り刻み、ビスを打ち込む現場には部外者どころか同僚でも接近させられない。用があるときには手が届かない程度の間合いで話すしね。
電動ドライバ、ドリル、カッターなどをガンガン使ってるところで、本人の手元にもカッターナイフだのプライヤーだのハンマーだのと殺傷力のある道具を並べてるわけだ。それも見越して安全対策を徹底するというのはどこの現場でも義務づけられているほどだし。冗談ではなく現場仕事では人が死ぬこともあるのだ。(ちなみに父親の会社はリベットガンのために銃砲取扱いの許可を取っている・・・リベットガンだと運が悪いと誤射されるってこともあるかも)
化け物退治の危険度はこの程度では済まないはずでしょ?つまり危ない仕事だから人を近づけたくないと。

あーあ・・・

正直、これに気づいたせいで「響鬼」を素直に楽しめなくなりそうで少々残念。今回の考察にしてもきっとまだ考え足りないに違いないんだが、考えるほど無理を感じる。それでも面白いものを見せてくれるのだから、俺が感じた疑問にもそれなりの答えを出してくれると、個人的には嬉しい。