「オメガファイター」

サイトロンレーベルの黄金期にあったミニアルバム・GSM1500シリーズのひとつで、UPLの「オメガファイター」「アトミックロボキッド」2作品を収録。

懐古主義ではない部分で明言できることなのだが、これは冗談抜きでよく出来た楽曲の塊である。PSGやFM音源の、しかも極めて種類が限定された音色と音数だけで組み上げられた音楽が、今時のゲーム音楽と同等、下手すればそれ以上に聞こえる。
最近はこれをCDだけでなく直接耳にしているので、以前にも増して意識するようになってきた。

前にも書いた記憶があるが、もっと突っ込んだ言い方をすると「音の取捨選択が正しい」ということ。曲を構成する各パートごとに耳を傾けているとわかる、他のパートとの相乗効果。そんなもんは作曲の基本だろうが、限られた条件下で切り詰められたそれは、わずかな数の音しかないはずの音楽にいろんな「雰囲気」「イメージ」をまとわせている。

このゲームの音楽は、各ステージごとにステージBGMからボスBGMへ変化するという構造を持っている。それが、各ステージ曲ごとに違うのもポイント。変化の前後で「何が継承されているか」「どう変化するか」が聴きどころだ。
たとえば・・・

  • 1面:ボスBGMで曲のサビへと移行するという展開。考え方によっては1面からやってることが変則的なのだが、1面が短いのであまり気にならない?
  • 2面:12拍子から早い8拍子に変化する。同時にメロディの音数が減り、そこまでのやや重いリズムからの開放感を味わえる。
  • 4面:妙にミステリアスなイントロで始まり、緊張感ある展開が続くが、ボスではイントロのようなミステリアスな音色を響かせる。好きな曲のひとつ。
  • 7面:大きな変化をしない曲の一つ。ただ面白いのは、前半は低音部、後半は高音部がメインパートを受け持っているということ。控えめだったサウンドがボス登場と共に大きく展開するイメージ。基本的にリズムやバックパートが変わっていないのに変化がわかるというのも面白い。

本格的に曲が面白くなり始めるのは3面のイントロの強烈なインパクトからだが、1、2面BGMも決して負けてない。総合的に見て「ゲーム的に面白い曲」が連続する良質のゲーム音楽。なんでこういう構造の曲にフォロワーがいないのかが少々疑問であり不満でもあるのだが・・・

それと・・・このゲームはネームエントリーBGMがバカみたいに長い。1ループ1分半って何事だよ!レコーディングスタッフもバカ正直に2ループ入れてるから、ネーム曲のくせにトラックが長い長い。
聴く機会がある方は、ぜひ。

ん?なに?「アトミックロボキッド」?あー、気が向いたらってことにして。誰もこんな話題・・・古いゲーム音楽の解説なんて2連発で読みたくないと思うし。
そうそう、補足しとくけど、俺は現代のスペックで創られるゲーム音楽も好きよー?「斑鳩」とか普通に名曲揃いだし。

でも、だ。

音源の性能が低いからといって音楽の良さは変わらない。ということは今になっても昔の曲を聴く価値があるってことだ。これを読むあなたがゲーム野郎なら、それは断言してもいい。
「オメガファイター」を題材に選んだのは、俺が最近やっているからという好みの問題以上に、「特筆すべき特徴があると判断したから」だ。古いゲーム音楽を聴くにあたって、面白く聴けるものを選んだら今回はこれになった。
そういうことだ。

余談だが、「アトミックロボキッド」のネームエントリーBGMはその構成から、実際に鳴っている以上の音数が存在するように錯覚させられる珍しい曲である。この曲も好きなんだよなぁ。