「蒼穹のファフナー」最終回

ホント、手堅くまとめたね。なんというか、前半1クール分の負債が後半を殺してしまってる。もったいない・・・フェストゥムの設定(他者という概念を持たない群体集合知性)とか個人的にツボだっただけに・・・なので、その分のマイナスは仕方がないものとして。

おー、見送ってる見送ってる。ゴウバインマスク受け取った彼までいるよ。いいねぇ。
というわけで、今観終えたのでビデオで流しながら感想でも。

前半の作画がもう壊滅的にダメ。作画は早いだけでクオリティが低いことで有名なところであるそうな。みんなブサイクだ(特に乙姫がひどすぎる)・・・が、それでもちゃんと話は動かしていた。
北極降下前に必要な情報を確認するシーン、剣司やカノン、真矢にそれぞれを確認させているのは、これが「みんなの作戦」「みんなのための戦い」であることを強調する意図があるのだろう。嬉しい配慮だ。
前半の敵陣突破では、剣司のマークアハト、カノンのマークドライにコンパクト化したイージス(衛のマークフュンフの装備を持ってきたな?)を装備、しかも敵陣突入の露払いにはOPのみ登場の幻の兵器「メドゥーサ」まで登場(すぐパージしたけど)と、作画のまずさが惜しいほど。

囚われの総士はイドゥンに利用され、一騎たちを殲滅する戦術を示すことになるが、それがちゃんとした意味を持っているので納得。

今回のキモは中盤以降だ。剣司は土壇場でヘタレ返上。おめでとう!イドゥンのマークニヒトに一撃見舞うシーンでは、死の恐怖を克服するためにあの「座標」を見つめるというのがいいね。
カノンは「あなたは、そこにいますか?」の問いかけに対し「前は、どこにもいなかった・・・だが今は、ここにいる!」と答えるように。以前は軍の駒として、自分という定義を捨てた生き方をしていたカノンが変わったという証拠。

ワルキューレの岩戸」に向かう乙姫。なんかこう、絵面的に笑ってしまうのだが。
ああ、そうか、島と同化する覚悟をしていたのに、改めて「ここにいたい」と涙する乙姫。心の中でせめぎ合う、超越者の意識と人間としての想い。そういうことだ。声をアテる仲西環の好演がアツい!こりゃ泣けるわな。
それにしても面白いキャラだ。その存在の特殊性ゆえに、子供の無邪気と大いなる母性を併せ持つとはね。
そして、同化した彼女から、新しい存在が生まれる。それが未来なのだろう。
島のミールが「空気」だというのも興味深い。島の生命そのものとイコールなんだろう。それに生命のすべてを伝えるために、彼女は同化し、存在は昇華されたのだろうな。

総士がイドゥンに教えた戦い方、それは「消耗戦」!戦う痛み、存在するということの定義そのものを思い知らせるためにそれを教えていたのだ。
憎しみを持つイドゥンは、「個」という概念、「存在」というものを教えた人間に、以前の自分たちへと戻すことを主張する。イドゥンが憎悪を向ける相手と理由がこれで成立したことになる。最後までフェストゥムであることに執着でもするのか、それとも単なるシステムとしての自己防衛か?

総士救出の結果、一騎の同化現象が進んでしまう。結果、視力が低下してしまうことに。
とはいえ、とりあえずこれにて作戦は終了ということになるか。で、脱出と。

敵の中心である「北極のミール」が動き出し、大気圏外でフェストゥムをまとめ上げて地球を完全に飲み込もうとする。それに対抗すべく一騎たちが取った方法は、一騎のマークザインを真矢のマークジーベンの狙撃銃と同化させ、エネルギーを集中して移動するミールを狙い撃つというもの。
真矢の手に一騎の手が置かれるイメージ、そして使われるBGMと、いい感じに盛り上げてくれる!ゴウバイン最期の戦いに使われたあの曲、これは燃える!

例の黒玉、つまりフェストゥムの世界観による「祝福」に呑み込まれたマークザイン。これを「こっち」に戻したのは、なんと甲洋!最後の最後で出てきたか。同化したザインとニヒトだが、イドゥンに打ち勝ってニヒトの姿を破ったザインが現れることに。
だが、総士はほとんど同化されてしまっていたようで、「フェストゥムの側へ行って」しまう。多分一騎の母がかつてそうしたのと同じなのだろうか。いつか帰るという約束を残して去った総士
そして、一人戻った一騎のマークザインを迎える真矢のマークジーベン。
かくて戦いは終わる。

エンドマーク。

無理してるよ、本当に。前半の負債を押し返し、なんとしても話を終着点へと降り立たせるための努力が見える。結果、いろいろなことを急いで描写している。もう少し尺があれば、もっともっと掘り下げていけたに違いない最終回。その姿を幻視しながら観ていたせいか、なかなか楽しめた。「きっとこういうことに違いない」と漠然と考えながら、シーンひとつひとつをリアルタイムで脳内分解して、意味を噛み締めながら観て、納得して楽しんだというわけだ。

今のままでも充分面白い部分を持っているのだから、完全な形であったならどんなに燃えたことか!そのことだけが惜しまれる!
とはいえ、「エヴァ」の劣化コピーと呼ばれた初期から考えれば、よくぞここまでやったものだ。内向的で閉塞した後ろ向きの世界観で出来ている「エヴァ」から脱却していると思う。こっちは閉塞などとは無縁だし、とにかく前へ進もうという姿勢のある人間が未来へ向かう可能性を示す物語だ。
これでいい。こういう方向性でいいんだ。暗く絶望的な世界を戦って乗り越える物語。

少年少女が戦うにあたって、その周辺を固める大人たちがきちんと描写されていたのも好感が持てる。大人は大人の責任を果たせるかどうか、という部分も描いていたのがポイントだろうか。世間ではどうやら溝口さんが人気のようだが、俺は真壁司令を推したい。なんだかんだで一騎の父ちゃんとして面白かった。あとはやはり小楯家。ゴウバイン良かったよ、ホント。
あとアレだ、2ちゃんの本スレで言われているけど、人妻アニメだよなこれ。人妻キャラがやたら多く、妙に味があるという(笑
残念なのは咲良のその後がどうなるのか全然見えないこと。生存してるし、同化を抑制したあとの彼女は割と気になるところでは?尺の足りなさが、そういう部分に響いているというのは問題だ。俺が一番引っかかってるのはこの件なんで、それも盛り込んで完全版を希望したいと思っている。


とはいえ、なかなかいいものを見せていただいたよ。このスタッフならいつかまたやってくれそうだ。
そして今回は構成&後期脚本の冲方丁に「グッジョブ!」またいつか、SFアニメーションのシリーズ構成や脚本などを手がけて欲しい。あ、嫁さんがキレない程度に(笑
はぁ・・・なんというか、残念な部分が多いけどいいものを観たと思う。欲を言えば・・・そうだな、DVD&ビデオリリースにあたってはこの最終回をリテイクして「完全版」でも作っていただけるとなお嬉しい。途中復帰の出戻り組ではあるが、本作のレギュラーキャラには愛着が湧いてしまったもんだからね。総士の「極めて便利だ!」は俺の中でちょっと流行るかもしれんよ。

後記その2/ファフナー感想について

序盤で視聴をやめたことをかなり後悔した作品。途中から徐々に良くなってきたようだしね。剣司、咲良、衛の3人が実戦に臨むあたりは結構面白いことになっていたらしい。うーん・・・機会を見て、序盤からおさらいすることも考えておこうか・・・。そのくらいの価値は、ありそうだよ。ラスト数話なんか相当面白くなってたしね。
もしかしたら、観返すうちに何か見つけるかもしれない。個人的には好きなネタでもあるし、今後しばらくはネタを引っ張りそうだ(笑
ともあれ、XEBECスタッフ一同に感謝。圧倒的傑作とは言えないが、結構な力作だったと思うよ。次回作には期待させていただく!


OP、CD欲しくなったなぁ・・・元から曲は好きだし、買うか?思い出したように口ずさんでるからなぁ。
♪今なら言えるだろう〜ここがそう〜楽園さ〜ぁ
           さよならぁ蒼き日ぃっ々ぃぃぃよぉぉぉうYeah♪